移住の失敗は「順番」から生まれる
地方移住の相談で多いのは、「移住先は決めたのに仕事が見つからない」「仕事は決まったが住まいが見つからず、単身赴任のような形になった」という話です。どちらも、移住そのものが悪いのではなく、決める順番が原因です。
2人で移住する場合は、さらに難しさが増します。1人分の仕事が決まっても、もう1人の仕事が決まらなければ生活は成り立ちません。片方が先に移住先で働き始め、もう片方が元の町に残って仕事を探し続ける。この「半分だけ移住した」状態が数か月続くと、生活費は二重にかかり、2人の関係にも負担がかかります。
だから、2人での移住では「どちらを先に決めるか」を意識して進める必要があります。進め方は大きく3つに分かれます。住まいを先に決める「住まい先行」、仕事を先に決める「仕事先行」、そして仕事と住まいが同時に決まる「同時」です。次の表で、それぞれの手順と失敗例を比べます。
3つの進め方|手順と起きやすい失敗
| 進め方 | 手順 | 向いている人 | 起きやすい失敗 |
|---|---|---|---|
| 住まい先行 | 1. 住みたい町を決める → 2. 住まいを契約 → 3. その町で2人分の仕事を探す → 4. 引っ越し | 住みたい町がはっきりしている人。在宅で続けられる仕事を片方が持っている人 | 町を決めた後で、2人分の仕事がその町にないと分かる。家賃だけ払い続けて、仕事を探すために元の町と往復する |
| 仕事先行 | 1. 2人分の仕事を決める → 2. 勤務先の近くで住まいを探す → 3. 引っ越し | 収入の見通しを先に立てたい人。移住先にこだわりが少ない人 | 入社日までに住まいが決まらず、片方だけ先に移り、もう片方が残る。地方は賃貸物件が少なく、条件に合う部屋が見つかるまで時間がかかる |
| 同時(住居つきの仕事) | 1. 住居つきの仕事を探す → 2. 2人で応募・相談 → 3. 採用と同時に住まいが決まる → 4. 引っ越し | 初期費用を抑えたい人。仕事と住まいをまとめて決めたい人 | 「住みたい町」と「配属される町」が一致しない。住まいが職場と一体なので、仕事を辞めると住まいも失う |
どの進め方にも失敗の形があります。大切なのは、自分たちがどのパターンを選んでいるかを自覚し、そのパターンで起きやすい失敗を先に潰しておくことです。
住まい先行の失敗を防ぐには
町を決める前に、その町の求人を2人分の視点で見ておくことです。片方の仕事は見つかっても、もう片方の仕事が「パートしかない」という町は少なくありません。移住相談窓口や自治体の求人情報を、契約前に確認してください。
仕事先行の失敗を防ぐには
入社日と入居日の間に余裕を持つことです。地方の賃貸は数が少なく、内見に行くにも遠方です。できれば、採用が決まった段階で勤務先に「住まいの紹介や社宅はあるか」を聞いておくと、探す時間を大きく減らせます。
同時(住居つき)の失敗を防ぐには
「住みたい町」へのこだわりを、応募前に2人で確かめることです。住居つきの仕事の多くは、雇い主や本部が配属先を決めます。「この県のこの町でなければ嫌だ」という強い希望があるなら、住居つきの仕事は向きません。逆に「地方ならどこでも、まず生活を変えたい」なら、最も早く動ける進め方です。
仕事と住まいが一度に決まる|住居つきの働き方一覧
「同時」の進め方の中心になるのが、住居つきの仕事です。代表的なものを、2人で働けるか、住まいの形、期間の目安で一覧にしました。一般的な傾向であり、個々の求人で条件は違います。
| 働き方 | 2人での就業 | 住まいの形 | 期間の目安 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|---|---|
| リゾートホテル・旅館のスタッフ | 2人同時採用の求人もある | 寮(相部屋か個室)。夫婦用の部屋は限られる | 数か月の短期が多い | 短期で貯めやすいが、期間が終われば住まいも終わる。長期で腰を据える形は別に探す必要がある |
| 農業・酪農の住み込み | 夫婦・カップルでの受け入れ例がある | 離れ・古民家など。設備に差がある | 季節単位から長期まで | 地域とのつながりが深い。体力仕事が中心で、収入は地域と作物で大きく変わる |
| 管理人・施設管理(マンション・寮・キャンプ場など) | 夫婦での募集が一定数ある | 管理人室・併設住宅 | 長期が多い | 職住が一体で、対応時間が生活に入り込む。募集は都市部にも多い |
| 介護・福祉施設の職員寮 | 2人それぞれで応募 | 職員寮・借り上げ社宅 | 長期 | 資格の有無で条件が変わる。地方でも求人が安定している職種 |
| ホテルのペア支配人(委託経営) | 2人1組が条件 | ホテル内の1LDK。家賃・水道光熱費0円 | 1年更新で長期を前提 | 2人でホテル1棟を運営する。配属先は本部が決め、全国170店舗超の中から着任。未経験からの着任が90%以上 |
表の中で、「2人1組が条件」と「長期」と「家賃0円」の3つがそろうのは、ホテルのペア支配人です。仕事も住まいも収入も、2人分がまとめて決まるため、「半分だけ移住した」状態が起きません。2人で応募する仕事の探し方は2人で応募できる珍しい仕事8選で、住居つきの仕事の固定費の差は家賃・光熱費がかからない仕事12選で詳しく書いています。
ただし、注意点も表のとおりです。配属先は本部が決めるため、「住みたい町」は選べる前提ではありません。さらに、住まいが職場と一体なので、契約が終われば住まいも離れることになります。この2点を受け入れられるかどうかが、この働き方が向くかどうかの分かれ目です。
どの順番でも共通する骨組み|4つの段階
3つの進め方は順番が違うだけで、通る段階は同じです。段階を飛ばした箇所が失敗になるので、自分たちがどこまで進んでいるかを確認しながら進めてください。
- 1. 情報収集:移住先の候補、2人分の求人、住まいの相場、生活費の目安を集める。ここで「2人分の仕事があるか」を必ず見る。
- 2. 2人分の仕事の見通し:片方だけでなく、2人の収入の見通しを同じ時点で立てる。住居つきの仕事なら、この段階で住まいも決まる。
- 3. 住まい:仕事の場所に合わせて探す。地方は物件が少ないので、勤務先の紹介や社宅の有無を先に聞く。
- 4. 手続き:転居届、保険や年金の切り替え、子どもがいれば転校。移住前の町の手続きと移住先の手続きを一覧にしておく。
この4段階を2人で紙に書き出し、「今どこにいるか」「次に何を決めるか」を共有してください。片方だけが動いていると、もう片方の仕事の見通しが抜け落ちます。2人で移住する以上、2人分の見通しを同じ時点で立てるのが基本です。夫婦での独立を考えているなら、脱サラして夫婦で独立する方法も合わせて読んでください。
移住を「生活を変える手段」として考える
地方移住は、住む場所を変えるだけではなく、仕事・人間関係・お金の使い方を一度に変える機会です。だからこそ、「どの町に住むか」より「どんな暮らしをしたいか」から逆算する方が、失敗が減ります。住まいの固定費を減らして貯蓄に回したいのか、自然の近くで働きたいのか、2人で一つの仕事に取り組みたいのか。目的がはっきりすれば、3つの進め方のどれが合うかは自然に決まります。
ペア支配人は、応募前にZoomで20〜30分の相談ができます。1人でも、相手が未定でも受けられます。「移住したいが、住みたい町が決まっていない」「2人で働ける仕事を探している段階」でもかまいません。着任前には50日の研修があり、支援手当として1日1万円が支給されます。年齢の目安は50歳位までです。移住の進め方に迷っているなら、まず「同時」の進め方がどういうものかを、相談で確かめてみてください。